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2008.07.10

心がパニックを起こしてはいけない(うつ病についてのテレビ番組を見て)

先日、テレビでうつ病の特集を見ました。
うつ病にかかったばかりの女性が出演していました。
彼女は独身で一人暮らしをしていました。
夜になると不安が押し寄せ、眠れないというのが彼女の一番の悩みでした。
そこで、彼女の夜の様子を知るために、部屋に無人カメラを設置して、一晩中カメラを回し続けていました。
その映像を見ると、彼女はベッドに入ってしばらくすると、すすり泣きを始めました。
やがて、大きな泣き声を上げながら、右へ左へ激しく寝返りを打ち始めました。
手でベッドをたたき、枕でベッドをたたき、
大きな悲鳴を上げながら枕を壁に投げつけました。
泣きながら、枕もとに置いてあった ぬいぐるみを次々に投げつけます。
そうして、寝ていることもできなくなったのでしょう、ベッドの周りを うめき声をあげながら歩きます。
そして、朝になり部屋が明るくなります。
彼女は完全にパニックに支配されていました。

うつ病にかかると、このように不安が不安を呼び、思考が暴走してしまうことがあります。
そんな時は、
例えば「隣の部屋に幽霊が入って来ている」と思い込んでしまったよりも、ひどいパニック状態になります。
精神が恐慌(きょうこう)状態になり、恐ろしくて恐ろしくてたまらなくなるのです。
そんな状態には、うつ病にかかったばかりの時にもなりますし、うつ病にかかって10年近く経(た)ってからもなります。
僕は今でもパニックを起こしかけることがあります。
パニック状態になってしまうことはありませんが、なりかけることはあります。
僕はもう うつ病が治って、精神科医にもかかっていませんが、パニックを起こしかけることはあるのです。

テレビの彼女のように、パニックに支配されてしまうのは非常に危険なことです。
彼女はアパートの4階に住んでいましたが、
このような状態の時、発作的に窓から飛び降りてしまう人もいます。
自殺はしなくても、こういう状態を一晩中続けてしまったダメージから回復するには、
大変な時間と休養が必要です。
とても、次の日の夜までには回復できません。
そうして、こういうパニック状態になるのを一晩 許してしまえば、次の日の晩もやはりパニックを起こしてしまうのです。
ダメージはたまって行き、うつ病が加速度的に悪くなってしまうのです。

では、どうすれば良いでしょうか?
僕の体験をもとにお話しましょう。
まず、第一に不安が押しよせても、それを夜には考えないことです。
どんなに良くできた怪談であっても、
それを昼間の太陽の下で話されたら、全く怖くないものです。
不安というのも同じなのです。
少し眠って、昼間に考えてみると、まるで怖くないものがほとんどなのです。
昼間に考えると「そんなことあるわけないじゃないか・・・」と笑ってしまうことだって、少なからずあるのです。
疲れているから、夜だからおかしなことを考えてしまう事というのは、案外多いものなのです。
僕は昔、「手紙の書き方」という本を読んだことがあります。
その中に「ラブレター(恋人に愛を伝えるための手紙)の書き方」という章がありました。
その中で最も大切なことは、「夜に書いたラブレターは、必ず朝に読み返してから出す事」だと書いてありました。
僕も夜明け近くまでラブレターを書いていたことがあります。
でも、翌朝念のために読み返してみると
「何をバカなことを書いているんだ・・・・・・・。」
と思ったことを覚えています。
夜に寝ないで考えていると、人は疲れてあらぬことを考えてしまうものです。

第二番目としては、自分の姿勢を確認することです。
自分が立っているのか、座っているのか確認してみることです。
その確認が正しくできるのであれば、まだ本当のパニックには陥(おちい)っていません。
そして、自分が立っていれば、「まず座る」ことが大変重要なことなのです。
立ってフラフラしているような不安定な体勢が、不安定な精神状態を助長(じょちょう、助けてより大きく)するのです。
右に左に寝返りを打ち続けている状態も、安定した体勢ではありません。
座って腰をすえている方が安定します。
僕はボースカウトでしたから、小学生の時から救急車の呼び方を知っていました。
呼び方で最も重要なのは「まず座ってから119番へ電話する」ことです。
数年前に父が心臓発作を起こした時、119番へ電話しました。
その時、まず聞かれたことは「あなたは今、座っていますか?」
ということでした。
前にも書きましたが、
山で遭難(そうなん)した時に、生きて還(か)えるための方法の第一は、草の上でも土の上でもいいから「まず座る」ことなのです。
これだけで生還確率が飛躍的に上がるのです。

第三に「座ったら、笑う」ことです。
心理的にどうしても笑えないこともあるでしょう。
でも、パニックが起こりそうになったら、
無理にでも「顔だけでも笑う」ことが必要なのです。
これは忍者の教えです。
同じようなことは2006年11月21日の「うつがちょっとでも楽しく感じられれば」(この記事が見たい場合はここをクリック)にも簡単に書いてあります。
(古い記事が読みたい場合には、画面右下の「バックナンバー」の文字の上でクリックしても見られます。)
笑顔を作ると「今、自分は楽しい状態、安定して楽観的な状態にあるのだ」と脳が誤解します。
そうして、パニックが一時的におさまります。

こんな時、
「もしもあの時、あの人にあんなことをされなかったら」「病気にさえならなければ」などの、
たらればを考えてはいけないことは前に書きました。
パニックが起こりかけている今の状態は、
例えて言えば、ナイフを持った殺人鬼に追いかけられている状態です。
こんな時に過去の思い出にひたっていてはいけません。
「病気が治っても、私はもう一生だめなんじゃないだろうか?」
などと、のんきに将来の展望をながめている場合ではないのです。
大切なのは今、この時なのです。
今、ここで思考の暴走を止められれば、それができれば確実に治るのです。

最後に僕がうつ病の時に心理カウンセラーから習った、思考の暴走を止める方法をお話しましょう。
それは時間を区切って思考を止めることです。
自分の思考が止まらないことに気づいたら、時計の秒針を見ながら5分間だけ思考を止めるのです。
そうして、その後、10分間だけ自由に考えることを許すのです。
そして、次に10分間思考を止めます。
思考を止める時間を10分、20分、40分と増やして行って、
一時間に10分間だけ考えるようにできれば、パニックはおさまります。
僕の経験に基づいた効果的な思考の止め方は、
2007年11月20日の「僕はどうして不眠症を克服できたのか?」(詳しくはここをクリック)に書いた通りです。

「病気が治っても、私はもう一生だめじゃないだろうか?」
こんな病気にかかったら、再発することを恐れられて、責任のある仕事はまかせてくれないんではないだろうか?
こんなに長期間、病気で休んだら再就職はできないんではないだろうか?
履歴書を見せただけで、不採用になるのではないだろうか?
一生、自分が望む職業にはつけないのではないだろうか?
等など、考えることもあるでしょう。
でも、それはうつ病者の復帰体験について、知らない人が考えることです。
ものすごく多くの人が社会に復帰して、生き生きと生きています。
僕が以前に通っていたリハビリ施設の友人で、
医者から推薦を受けて、障害者枠でまず精神的に楽な仕事に就職し、
自分がやりたかった仕事に転職した人を、僕は何人も知っています。
障害者枠で障害者を雇えば企業は減税されるのです。
だから、病気さえ治せば普通の人より就職率は高いのです。
将来の不安や心配よりも、まず治ることです。そのことに集中していいんです。

突然の危機的状況に対して、ひるまず、驚かず、最適な行動を取れる心。これを仏教の禅(ぜん)宗では「金剛心(こんごうしん)」と言います。
うつ病のパニックを乗り越えることによって、
「金剛心」という誰もめったに持つことができない心を手に入れることができます。
その心を持って、笑って困難に当たることができるようになるのです。
激しいピンチに あの人がいたから助かったと言われる人になることができるのです。
それは2006年9月5日の「笑う人」(詳しくはここをクリック)に書いた通りです。

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